フレッドペリーのポロシャツを買う
フレッドペリーのポロシャツというのは、モッズ時代から綿々と続くイギリスのファッションアイコン。英国音楽がお好きな方にはおなじみですな。
僕は90年代のブリティッシュ・ミュージックにどっぷりハマった世代で、フレッドペリーのことは、Blurのデーモン・アルバーンを通じて知った。というかフレッドペリーのことは知っていたけど、「ポロシャツ=おっさん臭い」と思っていたせいで眼中に入っていなかったのだ。
それが「デーモン・アルバーン格好いい→デーモンが着ている服なら何でも格好いい→(中略)→モッズまで英国カルチャーを遡る俺、格好いい」と自分目線で結びつけていったってわけ。
その(中略)にあたるのがフレッドペリーだけど、正直ポロシャツのクオリティとしてはだいぶラコステのほうが上だよなー、って若い頃は思っていた。まあ実際のところ両者には歴然とした価格差があって。
ここからは中年の昔語りとして、間違っていても多めに見てほしいのだが、今から二十年ほど前は、ラコステ=9800円、フレッドペリー=5800円。このぐらいのイメージだった気がする。ブランドの立ち位置も全然違って、ラコステ=おっさん、フレッドペリー=貧乏な大学生、みたいな雰囲気だったから、価格差もついて当然ではあるのだが。
かつて両方とも着た身としては、フレッドペリーは洗濯するとすぐに伸び伸びになっちゃう印象があって、「まあ確かにラコステの方がちゃんとしているよなあ、、、ワニがおっさん臭醸し出しているけどさ、、、」という思い出。
それから二十年。平成が終わり、令和が始まる記念すべき年にそれぞれのwebサイトを見ると、大体ラコステ=14000円、フレッドペリー=13000円。価格差はずいぶん縮まっている。となるとクオリティも似通ってきたのかな。フレッドペリーももう伸び伸びにならないのかな、、、なんて温かく見守る気分には全くならず。
ポロシャツに1万半ばって!!!!!!!!!!!!!!!
すみません、取り乱しました。この記事で言いたいことは上の一行に尽きるので、ここで読了しても全く問題ありません。
まあ、正直な話、なんとなく検索に引っかかりやすいかなあなんて欲を出して令和なんて書いちゃったけど、ポロシャツの価格相場がかなり上がっているのはずいぶん前から知ってた。というか、買って二年のフレッドペリーのポロシャツを、今まさにこのブロク書きながら着ているわけで。
実際のところ、フレッドペリーのポロシャツは、今も1万円を少し下回る価格で買うことができる。それでも二十年前の5800円に比べたらえらい違いだけどさ。ただ、ポロシャツで一万を超えてくるというのは、僕の中では神への冒涜に等しい行為というか。言うてもポロシャツでしょ??というか。とにかくオーバー1万円のポロシャツなんて、僕の中ではもはやポロシャツではない。フィル・ダニエルズだって、この状況を知ったら「フレッドペリーのポロシャツが1万円超え??ヒュー!ありえねーぜ!」と言うと思う。
とにかく。僕は40歳を過ぎてからふと思うところがあって、久々にフレッドペリーのポロシャツを買ってみた。ほんと、大学以来。
若い頃とは逆で、ラコステなら許せるけど、いい歳してフレッドペリーのあのマークを胸につけてカジュアルサマーに出社するのってどうなのって思っていて、社会人になってからフレッドペリーとはずいぶんご無沙汰になっていたのだった。
それが一体どうして?という話なんだけど、理由は簡単で、街で50歳過ぎのおじさんがフレッドペリーのポロシャツを見事に着こなしていたから。確かセントジェームスのボーダーのときにも同じようなことを書いた気がするけど、
僕の場合、「あ、これありなんだ」と思うのは街中で素敵なおじさまに出会ったとき。そうかあ、俺も着こなし次第でこんなふうになれるのか、、、と思うと途端にハードルが下がってくる。
願わくば僕のブログを読んで同じことを思ってくれる人がいたらとってもうれしいんだけど、、、、まあ厳しいよね、正直。
それはともかく、そんなわけでほぼ二十年ぶりにフレッドペリーのポロシャツに袖を通してみた印象としては、当たり前なのかもしれないが、ずいぶんよくなっている。かつてのあの伸び伸び感というか、作りの粗さみたいなのが全く見当たらない。
もちろん思い出補正もあるのだろうが、衣服はこの二十年で本当に進化したと思う。素材の問題なのか縫製の問題なのかはわからんけど。素材に関しては退化したという意見もあるので、製造工程のほうなんですかね?有識者の方。
胸のロゴもかつてのイメージよりは大分落ち着いたというか。ワニでも月桂樹でもどっちでもいいよな、ってもはや悟りの境地。
しかしそうなるとラコステとフレッドペリーの違いって、一体何なの?って話で。襟にボーダーが入っていたらフレッドペリー風??それくらいしかない。
僕はファッションの専門家ではないが、ブランドビジネスに携わってきた経験が長いので、ブランドから物語がなくなるのは致命的だということはわかっている。衣類全般のクオリティが上がっている現代において、ブランドの価値はそこに物語があるかどうかの一点だけ。
そんな目でフレッドペリーを見つめると、ちょっとこれから厳しいんじゃないかな、、、と思わないでもない。フレッドペリーもそれは意識しているようで、モッズパーカーの特集ページなんか用意していたりするのだけど、四万円超えですからね。
もう一度言うけど。四万円超えですからね。
話を元に戻すと、僕はフレッドペリーのポロシャツを今年になってからもう一枚入手した。プライベートではなく会社で使うもので、梅雨明けから稼働し始める予定。
本当は素肌で鹿の子編みの感触を味わいながら職場でPCをタタタターンとしたいところだけど、僕ももういいおっさんなので、そこはぐっと我慢してノースリーブのVネックTシャツを下に着る。おっさんには汗問題と乳首問題という致命的な二つの問題があって、もはや説明するまでもないので省略するけど、素肌にポロシャツは大変危険なのだ。